現代の日本に猟師は絶滅しているにもかかわらず、自分のことを猟師と名乗る人がやたらと多い理由を考えてみる。
猟師とは
国語辞典によると
りょう‐し【猟師】
〘名〙 猟をして生計を立てている人。狩人かりゅうど。
明鏡国語辞典
つまり、猟=狩猟と考えると鳥獣保護管理法による狩猟期間に猟をして生計を立てている人ということになる。一昔前の食肉の衛生管理が緩かった時代や毛皮に需要があった時代などは捕獲した獲物の販売などで生計が立てられたと思うが、現在冬の猟期だけで一年分稼ぐこのスタイルは正直厳しい。
現代版猟師とは
ということを考慮すると、法律を遵守して生計を立てる手段として考えられるのは次のとおり。
- ジビエ解体処理場への個体販売
- ジビエ解体処理場経営(買取は除き、自身で捕獲した個体のみカウント)
- ジビエ解体処理場経営(買取は除き、自身で捕獲した個体のみカウント)及びジビエ料理店経営
- 革製品の加工販売(自身で捕獲した個体のみカウント)
これらのパターンが一般的に想定される『猟師』像だと思う。※3については、飲食店経営の収益が大きいと想定されるため、微妙な部分はあるが、、、
ただし、猟期のみ運営しているジビエ解体処理場は聞いたことがなく、基本的に年間を通じて捕獲可能な有害鳥獣捕獲などで獲れた個体を対象としていること多い。
ちなみに、有害鳥獣捕獲は狩猟ではなく、事業(仕事)という位置づけであるためこれらの個体は猟師として生計を立てるという意味ではノーカウントとする。
つまり、純粋に猟期に獲物を捕獲することのみで生計を立てている者はほとんどいないと思われる。
有害鳥獣捕獲
有害鳥獣捕獲でシカやイノシシを捕獲し、その報奨金で生計を立てることは不可能ではない。不可能ではないが、ここで重要になってくるのは一頭あたりの単価である。これに関しては行政によってまちまちであり、シカであれば1万円〜2万円あたりが相場である。一月に20〜30頭捕獲する実力とその町の捕獲数の上限によるところが大きい。この点をクリアできれば有害鳥獣捕獲の報奨金のみで生活することは可能である。
呼称は何が適切か
『海の漁師』をイメージしてもらえれば容易に想像ができると思うが、釣り人の事を漁師と言わないように狩猟者を猟師というのは個人的に違和感がある。では、どのように呼称するのが適切か考えてみると、狩猟を行う人は
- ハンター
- 鉄砲撃ち
有害鳥獣捕獲と狩猟を行う人は
- ハンター
- 鉄砲撃ち
- 駆除ハンター
と呼称するのが適切ではないか。
猟師と名乗る理由
それでも、ただの狩猟者が『猟師』と名乗る理由を考えてみると
- 職業猟師が絶滅したため、指摘する存在がいない
- 狩猟(有害鳥獣捕獲)で捕獲する行為を『猟師』と思っている
- そもそも『猟師』という職業の意味を深く考えていない
- 一般人に説明する時に直感的にわかりやすい表現を使っている
- メディアのミスリード
これらの理由が考えられる。
まとめ
今までに出会った凄腕のハンター達の中で、誰一人として自分のことを『猟師』と名乗るものはいなかった。彼らに直接確認したわけではないが、おそらく狩猟という行為に真剣に向き合い、日本でいうところの『猟師』という職業には高い技術が必要で中途半端な覚悟では成り立たないと実感しているからこそ『猟師』という呼称に敬意をもっているのだと思った。つまり、タイトルの話に戻ると、自分のことを『猟師』と名乗っている人のほとんどは実力がお察しな件ということになる。この知識を利用すると、初めて会った狩猟者の実力を瞬時にチェックする方法としてもかなりの確度で使える優れものである。
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